電子マネーはデビットカードのライバル?実はちょっと相性が悪い

キャッシュレス決済の話題と言うと、近頃では QR コードを使ったスマホ決済ばかりがクローズアップされていますが、普及率で言えば電子マネーの方が圧倒的です。
また、世界中で使えるという意味では、国際ブランドデビットの方がはるかに利便性が高いです。ところがこの 2 つ、あんまり相性が良くないんですよね。注意点も色々あるので見て行きましょう。
電子マネーにはプリペイド型とポストペイ型がある
電子マネー自体の定義は少しあいまいなところがあって、法的にはプリペイドカードなどと同じところに分類されることもありますし、デビットカードも電子マネーの一種と定義されることもあります。
広い意味では決済方法を電子化した資金決済のことを電子マネーと呼んでいます。
大別すればチャージが必要なものと必要のない物に分けられる
今回は端末型電子マネーを電子マネーとして扱います。電子マネーには先にチャージしておく必要があるプリペイド型と、クレジットカードの端末として使えるポストペイ型があります。ポストペイ型では毎月の利用額はクレジットカードに請求されます。
- プリペイド型
・楽天Edy
・WAON
・nanaco
・交通系電子マネー( PiTaPa を除く) - ポストペイ型
・iD
・QUICPay
・PiTaPa
メジャーな電子マネーは以上です。交通系・商業系ともにマイナーな電子マネーはまだいくつかありますが、今回は省きます。
電子マネーとデビットカードはかざして決済できるところが共通点
日本国内の電子マネーは、Felica と言う方式で読取機との通信を行っています。この通信方式は大変応答速度が速いので、Suica などで改札を通る時に立ち止まる必要がありません。
一方、国際標準でクレジットカードやデビットカードのコンタクトレスカードに使われている通信方式の NFC-A/B は Felica よりかなり応答速度が遅いので、使う時はしっかりタッチしないといけません。
改札では困るかも知れませんが、決済の時にはそれほど困らないでしょう。決済音が鳴るまで読取機上でキープしておくだけで OK です。J-Debit や古い国際ブランドデビットにはかざして決済する機能はありません。
具体例・電子マネーとデビットカードに共通すること
さて、電子マネーとデビットカードに共通することについて、少し踏み込んでみてみましょう。ここでは国際ブランドデビットとプリペイド式電子マネーを念頭にお話しします。
もちろん、J-Debit にも共通点が数多くあるのですが、メリット・デメリットともに、少し毛色が変わっているのが J-Debit ですし、ポストペイ型電子マネーはクレジットカードとのつながりが強いからです。
利用時に決済されるキャッシュレス機能が共通点
電子マネーもデビットカードもキャッシュレス決済です。そして、クレジットカードのように立て替えてもらう機能が原則としてなく、自分の持っているバリュー(口座やチャージの残高)の範囲で利用することが共通しています。
- 加盟店でだけ利用できる
- かざして使う方式がある
- チャージ額や口座残高を越えて利用できない
- 利用と同時に残高が減る
- 紐付けられたクレジットカードの利用可能額の範囲で使える
- 利用月度のカード請求時にまとめて支払うことになる
- 返品やキャンセル
・デビットカードは返品時に口座への組戻しができることがある
・電子マネーでは原則として現金での返金になる - バリューの上限
・デビットカードは預金残高がバリュー上限になる
・電子マネーでは 20,000 円~ 50,000 円程度のチャージ上限がある - 利用上限額
・デビットカードは自分で利用上限額が設定できる(国際ブランドデビット)
・電子マネーはチャージ残高が利用上限額になる - 紛失・盗難・不正利用
・デビットカードは紛失届を出せばその場で停止でき不正利用の補償もある
・電子マネーは停止に時間がかかり、その間の不正利用は補償されない - デビットカードで買い物をする
- 銀行口座からお金が引き落とされる
- そのお金が加盟店に振り込まれる
- デビットカードで電子マネーをチャージする
- 銀行口座からお金が引き落とされる
- そのバリューが電子マネーに移動する
- 電子マネーで買い物をする
- チャージ額が減らされる
- そのお金が加盟店に振り込まれる
- nimoca (西鉄系)
- SUGOCA (JR 九州)
ただし、ポストペイ型の電子マネーは下の 2 つが異なります。クレジットカードに紐付けられた iD や QUICPay は下の 2 つが次のようになります。
つまり、iD や QUICPay は「クレジットカードの、かざして使うための端末」と言う役割の物なのです。
相違点は意外に多岐にわたっている
相違点には次のようなものがあります。
感覚的には、電子マネーは「小銭入れ」に近いものがあります。入る金額も小さいですし、落としたらそれで終わりと言うことですね。
その点デビットカードは、管理できる金額も多く、正しい利用をしていれば不正利用に対する補償も受けられるので、クレジットカードに近い性格を持っています。
楽天 Edy か Suica とクレジットがあればデビットは不要かも
デビットカードのもっとも優秀な点は、預金残高以上に使えないことから、使いすぎをコントロールできるところです。しかし、それ以外の点ではクレジットカードの方が多機能で便利ですし、利用制限もありません。
ですので、電子マネーとクレジットカードがきちんと使いこなせれば、デビットカードの出番はないかもしれないのです。
高校生のうちに両方を持って使い方を練習するのがおすすめ
高校生は家族カードを含めて国内用のクレジットカードを持つことができません。それに対して国際ブランドデビットは15歳または16歳で発行してもらえますから、高校生で持つことができます。
プリペイド式電子マネーには年齢制限がない方式のものが選択できますので、高校生なら両方を使っていろいろ学べるでしょう。どんな時にどちらを使うと便利かなどは、経験で身につけるのが一番です。
電子マネーは小銭入れ、デビットカードはクレジット代わりに使う
電子マネーは多くても 50,000 円までしかチャージできませんので、どうしても少額利用が中心になります。また、おサイフケータイを選んでおけば、ポケットに手を突っ込んでスマホを取り出し、それで決済できるのでまさに小銭感覚です。
それに比べるとデビットカードはカード入れや財布からプラスチックのカードを取り出して使うので、お札の感覚と言えるでしょう。お釣りに小銭が出ないのが良いですよね。
でも、この機能はクレジットカードで全く同じことができます。どちらが良いのかは自分の生活スタイルで選んで下さい。
楽天 Edy チャージも nanaco チャージもデビットカード不可
もちろん WAON や Suica などの交通系電子マネーもですが、デビットカードからチャージできるものはほとんどありません。昔は電子マネーのチャージに使えていたデビットカードも、今では使えなくなったものが多いです。
理由については明らかにされていませんが、業界用語的に言えば「トランザクションを複雑にするな」と言うことかも知れませんね。トランザクションと言うのは「一連の業務の流れ」のことです。
電子マネーとデビットカードは競合する部分がある
電子マネーもデビットカードも、お金を電子的な支払い手段を使って即座に決済するもので、そのお金が加盟店に振り込まれるときに手数料収入が発生します。ここで 2 種類のトランザクションを見てみます。
これは通常のデビットカード支払いです。ここにデビットカードで電子マネーチャージをしたと考えた場合次のようになります。
このようになります。トランザクションが複雑になっていますね。複雑になれば、そこで費用も発生しますし、トラブルも発生しやすくなります。それを嫌ったのではないかと思います。
もちろん、クレジットカードでチャージしても同じなのですが、デビットカードは銀行が発行していますが、クレジットカードはカード会社です。また、手数料率も異なりますので、クレジットカードは受け入れているのでしょう。
それに、クレジットカードでも電子マネーにチャージできるカードは限られています。
電子マネー搭載のデビットカードも少数ながら存在している
iD や QUICPay はポストペイ型なので、デビットカードにも搭載しやすいと思うのですが、SMBC デビットにiDが搭載されている程度で、あまり見かけません。
その他、組み合わせに「なるほど」と思えるような内容のものがいくつか存在しています。
セブン銀行のものには nanaco が搭載されている
セブン銀行デビット付きキャッシュカードには、nanaco が搭載されています。この場合、デビットカードから nanaco へのチャージも行えます。
とは言うものの、キャッシュカードとデビットカードと電子マネーが一体になっているので、チャージの際のお金の動きがどうなっているのか、ユーザー側からは分かりませんね。
でも、nanaco をよく利用する人には便利なカードです。
交通系を搭載したデビットカードもある
地方銀行の福岡銀行が発行している Debit+ は 2 つの交通系電子マネー搭載型が選べます。
いずれも Suica などと相互利用可能なものなので、九州の人には便利だと思います。
ライフスタイルに合わせてデビットカードを選ぶと良い
そうでない場合、電子マネーとはクレジットカードの方が相性が良いでしょう。