デビットカードの不正利用。重大な管理ミスがなければ補償される

デビットカードもクレジットカードも、そしてキャッシュカードですら不正利用はあり得ます。もちろんそれに対する補償制度もありますので心配し過ぎる必要はありません。
ただ、クレジットカードと違ってデビットカードは不正利用されると補償されるまでに時間がかかりすぎるきらいがありますから、自衛はしていた方が良いですね。自衛や手続きについて見てみましょう。
デビットカードが不正に使われたらすぐに銀行へ連絡する
日本国内で発行されるデビットカードは、J-Debit であれ国際ブランドデビットであれ、銀行が発行しています。ですので、不正利用が疑われるときは一秒でも早く発行銀行へ連絡しましょう。
銀行は連絡を受けたら直ちにデビットカードを無効化します。そして、預金者の意向に沿って新しいカードを発行するなり、解約するなりの手続きを行ってくれます。
少額の引き落としは身に覚えがなくても不正ではない可能性がある
J-Debit ではこうしたケースはめったにないと思います。あるとすれば国際ブランドデビットですね。これには大きく分けて 2 つのパターンが考えられます。
- 外国為替の調整
- デビットカード番号の有効性確認
利用時点と決済時点の為替レートの差額調整
海外でも、デビットカードは利用した段階ですぐに銀行口座からお金が引き落とされます。この時の金額は数日前のレートを参考に決められた暫定レートで処理されます。
一方、実際の決済はリアルタイムのレートで行われますから、為替レートが大きく動いた場合には、1円以上の差が発生することも珍しくありません。
その結果、不足分をあとで口座から引き落とすということが起こります。差額調整ですから逆に振り込まれることもあります。いずれにせよ少額であることが特徴ですね。
加盟店が口座の有効性を確認する場合がある
通販サイトなどに、買い物をしない時にデビットカードを支払方法として登録した場合、デビットカードが有効かどうかを確認するため、少額のオーソリ(利用承認の確認)を掛けてくることがあります。
ここでエラーが出るとそのカードは登録できません。逆に登録ができた場合、2~300 円程度の引き落としが行われた後、オーソリが取り消されます。すると数日~数週間後にそのお金は口座にもどされます。
このように、不正利用でなくても少額の引き落としが行われることはありますので、500 円程度以下の引き落としなら、慌てて銀行に届けなくても良いでしょう。
まずは、そうしたカード利用をしていないかを確認した上で、それでも不審だという場合は銀行に連絡しましょう。1,000 円以上の、身に覚えのない引き落としの場合は、直ちに届けた方が良いと思います。
限度額や条件はあるが不正利用は補償される
デビットカードの不正利用は原則として補償されます。但し、限度額が設定されていることもありますし、不正利用の内容によっては補償されないこともあります。
また、無期限に補償されるという者ではなく、不正利用から 1 か月以内くらいには届けておいた方が確実ですね。
J-Debit は 30 日以内に届け出をしないと補償されない
預金者保護法に基づくキャッシュカード規定では、預金者の故意や過失がない限り、紛失・盗難・偽造などによる被害は全額補償されることになっています。但し、不正利用から 30 日以内に届けを出さないと補償してもらえません。
補償されないのは金融機関の過失がない場合で次のようなケースです。
- 他人に暗証番号を知らせた場合
- 暗証番号をカードに書いていた場合
- 本人以外にキャッシュカードを渡した場合
- 上の 3 つと同等以上の注意義務違反が合った場合
- 預金者の故意による悪用
- 預金者の関係者による悪用
・配偶者
・2 親等内の親族
・同居の親族
・その他同居人
・家事使用人 - 金融機関に対して重要事項に関する嘘の説明をした場合
- 戦争や暴動等など著しい社会秩序の混乱に乗じてカードが盗まれた場合
また、補償はされるけれど、減額されるケースというものもあります。基本的には 75% に減額されるようですね。
- 銀行から暗証番号が類推されやすいので変更しなさいと言われていたのに変えなかった場合
・生年月日
・住所の一部
・車のナンバー
・電話番号(勤務先などを含む) - 金融機関以外ものと暗証番号を使いまわしていた場合
- キャッシュカードを車の中などに放置していた場合
- 酔っ払った状態でキャッシュカードを持ち歩いていた場合
- 暗証番号を記録したものと一緒にキャッシュカードを保管・持ち歩きしていた場合
- 上のものと同等以上の注意義務違反があった場合
国際ブランドデビットの補償規定は少し厳しい内容になっている
国際ブランドデビットの場合、年間の補償額に 50 万円~100 万円程度の上限が設けられています。届け出の期間は 30 日~60 日と、銀行ごとに差があります。ですから、デビットカードの一日の利用枠を、補償額より小さくしておくことが重要です。
また、補償されないケースは J-Debit と共通する部分が多いのですが、それとは別に重大なポイントがあります。
- 正しい暗証番号が使われた取引
- 本人認証サービスを用いた取引
- カードのサインパネルにサインがなかった場合の取引
「正しい暗証番号=本人しか知らない」、「本人認証サービスのパスワード=本人しか知らない」と言うのが前提です。ですから、暗証番号やパスワードの管理はしっかり行っておいてください。
また、サインパネルにサインが行われていないのは、管理を放棄していると見なされて、補償の対象になりません。
不正利用には盗難・不正取得とカード偽造の 2 タイプがある
デビットカードの不正利用には、カードそのものを奪われてしまった場合と、カードを偽造されてしまった場合の 2 つのケースがあります。
カードを紛失してそれが悪意の人の手に渡った場合も盗難と同じことになります。一方、カード犯罪で多いのがカードの偽造です。これにも2パターンありますね。
盗難や紛失に関しては防犯意識を高く持って管理するしかない
諸外国に比べれば日本はまだまだ安全ですが、それでも犯罪は確実に増えています。ですので、治安の悪い国に出かける時のような対策をしておくのは、海外旅行の練習になるかも知れません。
暗証番号を頭の中以外に保管しないのは基本中の基本ですし、金融機関以外のところと暗証番号を使いまわしてはいけません。これはクレジットカードにも共通ですね。
そして、どんなにしっかり暗証番号を管理しても、コンビニなどでは 1 万円以下なら暗証番号なしで使えてしまいますから、カード自体の管理をしっかり行いましょう。紛失したら一刻も早く銀行に連絡して下さい。24 時間対応の受付電話があります。
カード偽造にも 2 タイプあるが 1 つは防ぎようがない
カード偽造については、クレジットカードと全く同じ方法が採られます。キャッシュカードの偽造では、ATM からの不正な預金引き出し被害が大半です。カード偽造の場合、次の 2 つの方法で行われます。
- スキミング
- クレジットマスター
スキミングとは、カードの磁気ストライプ情報を、ATM など正規のカード読み取り装置に仕掛けたスキマーと呼ばれる専用の読み取り装置を使って盗み、それを別のカードにコピーすることで偽造カードを作る犯罪です。
この場合、磁気ストライプには暗証番号の情報は記録されていませんので、犯罪者は ATM 付近に取り付けた隠しカメラなどで暗証番号を盗み取ります。
クレジットカードや国際ブランドデビットの場合暗証番号なしでも悪用できますが、このごろは他の本人確認も併用されます。それでも本人確認が不十分な外国で悪用されることもありますから、カード情報を盗まれないよう注意しましょう。
一方、クレジットマスターはカード番号の法則性を悪用し、パソコンなどで総当たり的に有効なカード番号を作り出す犯罪です。これは防ぎようがありませんから、利用明細のチェックで発見し対策して下さい。
国際ブランドデビットは自分でカードの設定ができる
補償されるとは言っても、クレジットカードのように請求を止めてもらえるわけではなく、デビットカードの場合口座から一度は預金が減ってしまいます。補償されるまでに時間がかかるとトラブルの元ですから、被害に遭わないことが重要です。
国際ブランドデビットは、デビット機能を止めたり再開したりが、自分でネット上で簡単に設定できます。また限度額も自由に設定できますから、万が一の被害を最小限にできるでしょう。
国際ブランドデビットの設定を自由自在に使いこなす
銀行によって多少の差異があるかも知れませんが、だいたい預金者専用サイトで設定できるのは次のようなものです。
- デビット機能の停止・再開
- 海外利用の可否
- 国内での預金引き出し限度額
- 海外での預金引き出し限度額
- 一日当たり合計デビット利用額の設定
- 本人認証サービスの設定
海外に出かけていない期間中は、海外利用を完全に停止しておくと、かなりカード犯罪を防げます。また、デビット利用額をできるだけ低く設定しておくのもコツですね。
さらに完全を期すなら、面倒ですが寝る前にデビット機能を止め、出かける前にデビット機能を回復しておくのが良いでしょう。
通帳確認・利用通知メールの確認を怠らない
大抵の銀行では、デビット機能を利用したら通知メールが来ます。できるだけスマホなどいつでもメールがチェックできる環境でそれを受け取り、すぐに確認する習慣を身に着けましょう。
さらに、最低でも週に一度は通帳またはインターネットバンキングで口座の入出金状況を確認しておくといいですね。
不審な動きがあったら、調べた上で銀行に連絡して下さい。
大切なのは正しいカードの使い方と保管
そして、車の中だとか職場のデスクの引き出しやロッカーだとか、安易な場所にカードを置かないことも大切です。もちろん暗証番号を自分の頭の中以外に記録することは厳禁です。
それを意識しておけば、万が一の際にも、すぐに届けを出せば被害額は補償してもらえるでしょう。